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【笛吹き道中記】朱鷺たたら メルマガ18

更新日:5月14日

曲の調性に応じて適切な笛の調子を選ばなければならないというお話をしてきました。


調性に合った調子を選ぶのは最低ラインのことですが、


実際、ひとつの調子の笛でいくつかの調性を演奏することができるといいうことも


お話ししました。



さあ、そこで、笛吹きが考えるべきことは、


最終的にどの調子を選ぶべきなのか。


その判断基準はどこにあるのか、についてお話ししたいと思います。



例えば、♭がひとつついた曲が提示された場合、


C管である8本調子を使って、一か所だけ変化記号を使用して吹くことができます。


他には、


もともと♭がひとつついた調性に調律してあるF管、1本調子を使って、


どこにも変化記号を使わずに吹くこともできるでしょう。


さて、このふたつの調子、


8本調子と1本調子のどちらにするか、ということです。



笛としては8本はずいぶん高い調子ですから、竹が短く、


音色も軽やかでさっぱりと良く音が通ります。


1本調子は一番長い竹で作られていますので、


高い音域はあまり音のヌケがよくありませんが、逆に低い音域には


豊かなまろやかな音色を誇ります。



指使いは2つの調子でそれぞれ変わります。


どちらが楽に奏せるか、ということは一番気になるところかもしれません。


けれども、


指使いが楽である、というだけに着眼するのではなく、


笛のよく奏する音域が笛の特性を生かせるか、や


その曲想を表現するのに適しているか、といった点まで考慮する必要があります。



指使いが楽かどうか、だけを考えるというのはあまりにも思慮が浅いといわざるをえません。


例えば弦楽器でも、開放弦の調律された音を多用する調性だと、


開放弦を使用するのですから、楽器は楽にろうろうと鳴り、


奏者も楽ですよね。


けれども、作曲者は楽器の操作性が簡単であることを最重要して作曲しているわけではなく、


弦を押えたときに、ミュートする感じの、アンニュイな音色を引き出したい、とか


そういったことまで考慮しています。



奏者の側で使う調子を選択することの多い篠笛では、


私自身はこういった理由で、曲想から一番適切な調子を選ぶようにしています。


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